読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

稲垣吾郎ドラマ アザーセンス 霊感心理カウンセラー 六条伍銅⑦

 伍銅が見る映像。それは、開かれた心の箱の持ち主が潜在意識の中に押し込んだ出来事をフラッシュメモリーのように、断続的に見える。まるで映画の予告編を見てるような感じである。映像の渦に巻き込まれるような感覚に陥る。カナが去った後でも伍銅はしばらく立ち上がることが出来なかった。どのくらい時間が経過しただろうか。伍銅が達也に向かって口を開いた。

「吉井貫のスマホはカナが叩き壊してすでにS川に捨ててある。そのスマホが見つかってもデータの修復は困難だろう。ただ・・」

「ただ?」

「サイトだ。幼児のわいせつ画像のサイトを調べてくれ。貫は真奈のわいせつ画像で小銭を稼いでいたんだ」

 驚いた達也は思わず椅子から立ち上がった。

「本当か?」

「ああ。まずは僕の家に戻ろう。車の中で説明するよ」

 二人は達也の運転する車で伍銅の居へに向かった。途中、伍銅がカナの深層心理について説明をした。

「カナは、子供の頃多分小学4年生くらいだ。その時母親の男にレイプされている。母親は男を責めるどころか、カナを罵った。娘を女として母親は認識していたんだな。嫉妬だよ。カナは父親のような年齢の男の性的暴力と自分を守ってくれない母親に、激しい憎悪を抱いた。決して、自分は母親のようにはならないと心に誓った。深い心の傷をカナは心の奥底に押し込めた。カナは自分の父親のような年齢の男性に嫌悪感を持つようになった。早く家を出ようと中学を卒業すると家を飛び出した。そして初めて恋をした大学生との間に真奈を身ごもった。結婚はかなわず、カナは悩んだ末シングルマザーの道を選んだ。普通の結婚と平凡な家庭を望んでいたカナだったが、自分にはそんな資格がないんだと思ってしまった。ただ、産まれてくる子にはありったけの愛情を注ごうと決めたんだ。実際、カナは真奈に出来る限りの愛情を注いでいた。それはカナ自身が全く愛情に渇望していた裏返しなんだ。カナは真奈に愛情を注ぐことで、自分の乾いた心を満たしていたんだ。そんな時、吉井貫と出会った。自分より9歳も若い高校生の貫に、母性のような愛情を注いだ。父親のような年齢の男ではない年下の貫には、安心感を感じられたんだ。もちろんカナだって貫との結婚なんかは望んではいなかった。ただ、真奈だけに生きて来た自分が久しぶりに女としての小さな幸せを感じていたんだ。真奈と貫の間でカナの心はゆっくりバランスが崩れかけていた。自分でも気づかないふりをしていても、真奈より貫への気持ちが強くなっていっている自分を憎んだり、さげすんだりカナの心は激しく揺れ動いていたんだ」

 伍銅の話を聞いていた達也が感心したように言った。

「なるほど、それで娘が邪魔になって殺したんだな」

「いや、違うよ」

 人差し指を額に当てて伍銅は話を続けた。

「真奈も子供心に母親の心の動揺には気づいていたんだ。母と娘だから分かる直感的なものだけどね。この揺れ動く母と娘にある重大な出来事が起こったんだ」

「えっ?さっき言っていた画像か?」」

「そうだ・・・。吉井貫が真奈のわいせつな画像をカナに内緒で撮って売っていたんだ。真奈もカナに言えずにいた。言うと母親が困るだろうと察していたんだ。ところがある日、偶然貫のスマホを見たカナがその画像を見つけたんだ」

「それは衝撃だったろうな」

「ああ。カナは最も嫌っていた自分の母親と何も変わらない、同じなんだと絶望した。母親の男にレイプされた過去を思い出し、抑圧されていた感情がカナを苦しめる。今度は自分が愛した男が娘の真奈を辱めている。やりきれなさがカナを襲った。カナは貫と別れるために市営住宅に申し込んだんだ」

「そう言う事か・・・」

 達也は車のハンドルを強く握りしめた。達也はこれまでのカナの事を思い出していた。4階建ての団地の外階段から4歳の少女が転落した。4階の現場には母親のカナが居た。真奈が落ちる瞬間を向かいの団地に住む主婦が目撃していた。子供が落ちてゆくのとカナの伸ばした右手が見えたと証言した。突き落とした手なのかはっきり断言できなかった。状況から子供が誤って落下したか、母親が故意に転落させたかだったが、カナがあっさり自分がやったと自供したのだった。警察にも弁護士の達也にもカナは一切申し開きをしなかった。それが達也に違和感を与えていた。自分が愛情を注いで育てた娘を、なぜ?どこか冷めきり、涙も見せないカナに或る意味怒りさえ覚えた時もあった。カナの本心に触れたくて伍銅に相談したのだった。