読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゴロチマニア 

日比日向多が勝手に稲垣吾郎さんを語ってます

稲垣吾郎ドラマ 六条伍銅シリーズ 王子様な生活④

         三崎れいの場合

 8年前、ドラマの共演でれいと知り合った。僕が34歳でれいが26歳だった。れいは、それまで恋愛ドラマのヒロイン役が多く、年齢的に役の幅を広げたい時期に差し掛かっていた。僕もちょっと今までとは違うコミカルな役に挑戦しようとしていた時で、ドジな探偵とバイオレンスな美女の依頼者という役どころで二人の意外性と、ロマンスの無いストーリーが好評だった。れいは165㎝のスタイルの良い美人で、デビュー当時から年齢より大人の雰囲気を感じさせた。ナチュラル美人と言うよりは、きっちりとメイクをしたスキのない都会的な感じで、派手系ではあるが凛とした美しさを持っていた。ドラマの収録を終える頃には、二人の関係は恋人同士になっていた。デートはおしゃれなイタリアンやフレンチ。僕の趣味に合わせてれいもゴルフを始めた。レストランの食事にはコンサバティブな装いで、ゴルフの時は崩しすぎないスポーティーなウェアーで、ドライブの時は、ジーンズにリネンのシンプルなシャツを合わせてくる、れいのセンスの良さも好きだった。付き合って2年経つ頃、れいは僕のマンションの近くに引っ越してきた。れいはそれまで大学生の妹と住んでいたのだが、妹が就職して名古屋に行くことのなったのが切っ掛けだった。それまで時々れいは僕のマンションに来る事があった。時間がある時はれいが料理を作ってくれた。ビーフストロガノフやアクアパッツァを材料にこだわって作っていた。味は三ッ星とはいかないが、普通においしくいただけるものだった。

「伍銅さんに料理を出すって緊張するの。いつも美味しいもの食べてるでしょう」

「れいの料理もおいしいよ」

「・・・、今度私の家に来て」

「君の家?」

「ええ、ほら近くにお部屋借りたでしょ。ここみたいに豪華なマンションじゃないけど、本当の私を知って欲しいの」

 

 れいに言われて、僕が初めてれいのマンションに行った日。白と黄色のカラーの花で作った花束を持って訪ねた。出て来たれいは、白地に紺のボーダー柄の上下の部屋着を着ていた。生地はパイルでモコモコ感がある物だ。顔はすっぴんで眼鏡を掛けていた。花束を渡すのも忘れている僕にれいが申し訳なさそうに言った。

「ごめんなさい、驚いた?まずは、あがって」

「ああ、今日はお招きありがとう。これ・・・」

 僕は花束を手渡した。

 部屋に入ると8畳ほどのリビングに3畳のキッチンがついていた。リビングの中央にはコタツがあり、座椅子が二つ置いてあった。近くにカウチソファに座布団が3枚置かれていて、テレビとパソコンデスクがあった。

「適当に座って。今料理を盛り付けるから」

「ありがとう。何か手伝おうか?」

 キッチンに向かって言った。れいは食器棚から器を選んでいる。

「ああ、じゃあ冷蔵庫から飲み物を出して。ビールか缶チューハイなんだけど・・」

 冷蔵庫を開けると、6缶のビールと色んな種類の缶チューハイが入っていた。

「れいは何を飲むの?」

「ああ、私はチューハイ。レモンので。伍銅さんは好きなの出して。ワインとかなくってごめんね」

「いいよ、大丈夫。僕はビールで」

 コタツにビールとチューハイの缶を置いた。僕の部屋で二人で飲む時は、ワインをデキャンタに入れて飲んでいたが、どうやら今日はグラスもないようだ。

 れいが自分で作った手料理を次々に運んできた。

「おいしそうだね」

「本当?うれしい」

 素顔のれいは普段より幼い顔をしている。都会的な感じではなく、素朴でカントリーな感じだ。

「あのね、今日は普段の私を知って欲しかったの。私は田舎の子で、料理はこういうのが得意なの」

 そう話すれいは話し方も子供ぽかった。

「んと、肉じゃがと春菊の胡麻和え、わかめときゅうりの酢の物にきんぴらごぼう。お味噌汁はお豆腐です。高校生の頃から作ってたの。どうかな、食べてみて。あっ、その前に乾杯」

 れいはチューハイの缶のリングプルを開けた。僕もビールのリングプルを開け乾杯した。

「れいの素顔に乾杯」

 ビールを缶で飲むのはいつ振りだろう。そんな事を考えながら、れいの料理を口にした。優しい味のする料理だった。都会とは対極的にある味。研ぎ澄まされていない、角の立たないそんな味がした。

「おいしいよ。味が優しい」

「マジで?やった~。ドキドキものだったの。ねえ、本当の事言うと、私今まで結構背伸びしてたの。伍銅さんに似合う大人の女を意識して。でも、そんなの長続きしないって思って、思い切って素の自分を出してみたの。だから伍銅さんも本当の自分を出して欲しいの。ずっと六条伍銅の着ぐるみ着てるけど、脱いじゃって!」

 脱いじゃってって!う~ん、僕の場合、そういうのは、むしろもう一つ着ぐるみを被る感じなんだけど・・・・。