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ゴロチマニア 

日比日向多が勝手に稲垣吾郎さんを語ってます

稲垣吾郎ドラマ アザーセンスⅡ 霊感心理カウンセラー 六条伍銅②

 病棟の面談室で僕は石山真紀と初めて会った。真紀は看護師に連れられて部屋に入ってきた。薄幸な美人と言った感じだった。すっぴんで少し疲れを感じさせた。しかしその目の奥は、何か沸々とした印象を僕に与えた。

 初めに梨花が口を開いた。

「こちら六条先生。心理カウンセラーで、私の大学の先輩なの。今日は石山さんとお話して頂こうと思って」

 石山真紀はチラッと伍銅を見ると軽く会釈をした。

「今日は、ちょっとお話させて下さい」

 柔らかな物腰で伍銅が言った。

「はい・・・」

「石山さんは、自宅で倒れていたらしいけど、何かあったんですか?」

「いいえ。多分貧血か何かで、あまり食べていなかったし、よく覚えていません。気づいた時は病院でした」

 拒否することもなく真紀は質問に答えた。

「今は、一人暮らし?」

「ええ」

「息子さんを亡くされてるとか?」

 まきは一瞬唇を噛んだ。

「ええ。自殺しました。その辺は聞いているんですよね?いじめで。学校は何もないような説明で。不登校になって小学校は卒業して。中学に行ったけど入学式以外は学校に行かず1月後に首をつりました」

 面談室で小さな机に伍銅と真紀は向かい合って座っており、伍銅の右斜め後ろにタブレットを持った梨花が座っていた。真紀は梨花の方を見ながら答えた。まるで、質問の答えを聞きたいのは梨花だと知っているわよ、とでも言いた気な様子だった。

「学校の対応に不満でも?」

「もちろん、小学校にです。でもすでに卒業していたので、関係ないという対応でした。私にとっては辛い思い出です。あまりお話ししたくはありません」

 真紀が心のシャッターを下ろしかけたように伍銅は感じた。

「いじめた子のお父さんが死んだのは知ってますか?」 

 シャッターを下ろさせまいと伍銅が言った。

「はい。私が殺したとでも?」

「まさか・・・。ただ、罰が当たったと思いませんでしたか?」

「・・・・。罰?そうですね。だとしたらいじめた子供の方に何かあるべきかと思いますが」

 伍銅は、まだ真紀の心の箱が見えていなかった。今シャッターを下ろされると、真実から離れてしまうと懸念した。確かに、殺されたのはいじめた張本人ではなくその父親で、殺したのは母親だった。真紀がそうさせたと考えるには無理があった。

「石山さんは、趣味って何?」

 黙って聞いていた梨花が口を開いた。

「趣味、ですか・・・、無いです。貧乏だし」

 真紀は離婚後母子家庭で息子を育てて来た。仕事は市の保育園の給食でパートから始めて、2年前嘱託扱いになった。生活はぎりぎりだった。

「趣味って、そうそうないわよね。私も無趣味なんだけど、最近競馬をやったの。ちょっと友人に誘われて、ほら大物歌手が馬主の馬いるでしょ。ギャンブルって依存症になる人多いけど、あの殺されたお父さんもパチンコ依存症だったみたいで」

 梨花の話で、急に真紀の心の箱が伍銅の意識下に広がった。

「パチンコ?石山さんパチンコは?」

 伍銅が真紀に聞いた。

 真紀に一瞬迷いの表情を感じた。少し間が開いて真紀は答えた。

「やったことはあります。でも、負けたら物凄く後悔して」

 伍銅は真紀の心の箱を見つけた。鍵となるワードは『パチンコ』、多分もう一つあるはずだ。何とか見つけ出したいと思った時、真紀が立ち上がった。

「先生。もう私食事もできますし、どこも悪くないと初めに担当していただいた麻酔科の山田先生に言われてます。なぜ今カウンセリングを受けるのか理解できません。今日、事務の人から入院費の事で聞かれました。払えるかって。これ以上入院費がかかるのも困りますので、もう退院させて下さい」

 真紀は一気に心のシャッターを下ろしてしまった。