ゴロチマニア 

日比日向多が勝手に稲垣吾郎さんを語ってます

稲垣吾郎ドラマ アザーセンスⅡ 霊感心理カウンセラー 六条伍銅⑦

  真紀の心の着地点を伍銅は思案していた。真紀は自分でもどう納得するべきか、分からなくなっている。ほんのささいないたずらで、殺人事件が起きた。もしかしたら、子供たちもほんの小さな嫌がらせが、思わぬいじめ問題に発展したのかもしれない。と思う反面、いや息子が自殺を選ぶほどの、ひどい状況があったのだ。自分の子がいじめの主犯格なのに、悪びれず高圧的な態度の長瀬夫婦。だから子供があんな風に育つのだ。自分のいたずら電話なんか関係ない。勝手に夫婦喧嘩して妻が夫を刺したのだ。亡くなったことは不幸だが、しかし長瀬夫婦が石山真紀の息子が死んだことに、何も感じないように真紀も長瀬の夫が死んだことに何の悲しみも感じなかった。ただ、そんな自分に落胆したりした。寂しい心の自分が辛く感じた。

 

「伍銅さん。このまま真紀さんを退院させて大丈夫かしら?」

 梨花が静かに聞いてきた。

「そこなんだけど、・・・。ああ、ちょっと待って、電話」

 伍銅はかかってきた電話に出た。

「達也?もうすぐ着く?ああ、わかった。待ってるよ」

 電話を切ると、伍銅は梨花に向かって言った。

「もう少しで、沢村が来る。そうしたらもう少し事情が分かると思う」

「弁護士の?沢村先輩?」

 梨花と伍銅が付き合っていた頃のことを沢村も知っている。同じ大学だったし、伍銅に友人として、何人かで集まる時は一緒になった事もあった。

 

 20分ほどして、達也が六条家に到着した。

「遅くなってすまない」

 部屋に入った達也は梨花を見て言った。

「久しぶり。梨花先生。まさか伍銅の家で再会するとは・・・、あれ、もしかして二人は・・・」

「達也。違う違う。仕事で、よりを戻したりはしてない」

 伍銅がさらりと答えた。そして達也に話を切り出した。

「それより、長瀬夫婦の事なんだが・・」

「そうそう、他の弁護士に聞いたら、もともと殺された長瀬正樹は、女癖が悪くて、会社の女子社員なんかにセクハラまがいの事をしていて、あまり職場では評判が良くない。営業先の会社の女の子をしつこく口説いたり、下ネタをいつも言っててそのあたりも嫌がられてる」

「仕事は何?」

 梨花が聞いた。

「もともと建設会社の営業マンだが、最近この会社が建設以外に警備保障の仕事も始めて、長瀬は警備保障の営業と、人がいない場合は警備の方もやっていやみたいだ。そこで、警備の事で出入りする会社の女性の事務職員なんかに、ちょっかい出していたみたいなんだ」

「じゃあ、本当に浮気していたの?」

 梨花が驚いた声で聞いた。

「浮気、と言うよりは、一方的に2人の女性にしつこく言い寄ってたりしていたみたいだ。一人は同じ会社の29歳の独身女性。彼女は努めて2年なんだが、その間ずっと長瀬に個人的に飲みに誘われたり、メールを頻繁に送られて迷惑していたようだ。ただ、今年の年末で結婚して転居するのが決まっており、それまでの辛抱だと思っていたらしい。もう一人は、パチンコ屋のパートの20歳の学生だ」

「パチンコ屋?」

 思わず伍銅が聞いた。

「ああ、そのパチンコ屋は警備の仕事で出入りしていたようなんだが、そのパートの子が気に入ったようで、時間がある時は自分がパチンコ屋の客として出入りしていたみたいなんだ」

「なるほど・・・。それで、妻は夫の女癖の悪さと、パチンコにお金がつぎ込まれる事で口論になったのか」

「じゃあ、真紀さんが原因ではなかったのね?」

 梨花が少しほっとして言った。

「・・?真紀さん?」

 達也が梨花と伍銅の顔を代わる代わる見ながら聞いた。

 伍銅は達也に石山真紀の事を説明した。

「そうか。まあ、直接の原因じゃないだろうね。その石山真紀が電話をした時より前から、すでに夫婦喧嘩はよくしていたようだし。実際、家に入れるお金も減っていて、実際はパチンコで負けがこんでいたんだが、妻の洋子は女に貢いでるんじゃないかと疑っていたようだ。そのあたりの口論で、つい感情的になって刺してしまったようだ」

 伍銅は左手の人差し指を額に当てながら考えていた。

「伍銅さん。これって・・・なんて真紀さんに説明したら良いかしら」

「僕が心の箱を開けてしまった以上、必ず心の安寧を与えなくてはならない。真実と彼女の心と、しっかり石山真紀自身が受け止め納得できた時、やっと自分の感情を理解できる。そのプロセスを今しばらく考えてみるよ」

 伍銅はそう言うと、静かに目を伏せた。梨花も達也も伍銅が何か言うまで口を開くべきではないと感じていた。どのくらい時間が経過しただろうか。伍銅がふいに口を開いた。

「明日、石山真紀に面会することは可能かい?」

「ええ。もちろん。じゃあ、伍銅さん」

「すべては明日だ」