ゴロチマニア 

日比日向多が勝手に稲垣吾郎さんを語ってます

稲垣吾郎ドラマ アザーセンスⅡ 霊感心理カウンセラー 六条伍銅⑧

 明日、病院で石山真紀に会った時、彼女の心を安寧の世界へ連れ出すことが出来るだろうか?でもそれが六条家の特殊能力を持って生まれた人間の使命でもある。そんなことをぼんやりと考えていたら、達也が急に話し出した。

「ところで、梨花ちゃんはまだ独身?」

「そうですよ。バツ1個もついてません」

「そっか~、でも医者なら忙しいか?」

 少しおどけたように達也が言った。思わず梨花もクスッと笑った。

「忙しいですよ。私、結婚しなくても一生食べて行けるようにと思って、医学部に入りなおしたんですから」

「そうなんだ!」

 梨花がそんな気持ちで医者になったのを伍銅は知らなかった。独り言のように伍銅が言った。

「お前も知らなかったの?あの頃伍銅ちゃん、ちょっと落ち込んでたよな~」

「何?いいよ、もう昔の事なんだから」

 確かに、梨花から突然別れと進路変更を聞かされて、彼氏なのに何も知らされていなかった事に釈然としなかった。しかし、そこを解き明かす勇気もなく、梨花とは別れたのだった。達也との会話をどんな顔で梨花は聞いているのか。伍銅はチラッと梨花を見ると、特段表情も変える事のない梨花がいた。その時伍銅は本当に終わった事なんだと実感した。

 

「それじゃあ、明日病院で待ってるわ。午前は外来診察だから、3時過ぎにでも来て下さるとありがたいわ」

 一足先に梨花が帰った。梨花を見送った後で達也が真面目な顔で聞いてきた。

「まだ好きなんだろ?俺、二人は結婚するって思ってたからな~。復縁は?」

「・・・好きなのかな?」

「嫌いじゃないだろ」

「ああ、もちろん。心理カウンセラーなのに、梨花の気持ちがさっぱり分からないんだ。梨花の方が別れたがってたんだから・・・。もう、友人だよ。この先も」

 自分の事になるとさっぱりだな、伍銅は首を軽く横に振った。達也はそれ以上突っ込むことなく、軽く伍銅の左肩を1度叩いて、帰って行った。

 

 

 翌日の午後伍銅は病院を訪ねた。梨花が病棟の面談室に真紀を呼んだ。部屋に入った真紀は伍銅を見て、軽く会釈をした。

「石山さん。こんにちは」

「・・こんにちは。あのお~、まだ何か?」

 静かに真紀が聞いてきた。

「今日は、石山さんの心の整理をさせて下さい。決して、悪いようにはしませんし、入院を長引かせることもしません。むしろ、退院を進めます」

「はあ・・・」

 伍銅の言葉が意外だったのか、ちょっと真紀の目が泳いでいた。

「息子さんのお名前、何でしたっけ?」

「壮介です」

「壮介さんが、いじめにあって不登校となった時、あなたはどう思いましたか?」

「・・・その話ですか。もう、あまり覚えていませんが、困ったと思いました。母子家庭で経済的にも厳しかったので、このままニートになられては、この先の事が心配でした」

「はじめは、ほんのささいな事で不登校なんだと思ったでしょう。でも、実際は壮介君の心がずたずたになるような嫌がらせが行われていた。そして、あの保護者説明会で見た長瀬夫婦の傲慢さ」

「そうですが、今話す事ですか?」

 話の内容が真紀にとって、心地よくなかった。そのためやや苛立った口調になっていた。

「これから僕が一方的に話します」

 伍銅もやや強い口調で返した。面談室の隅で聞いている梨花は右手を握りしめた。六条伍銅の舞台を今間近で見るような気分だった。